8.環境への取組

ツリーハウスを通じて、環境への取り組み

私、村田弘志は、発達障碍児童のために設けられたNPO法人フリースクールの管理による森の学校にて、森林の整備と保護活動を行なっています。それにともない森の体験学習においては造形美術の専門家として教育指導も行ってきました。障害者のみならず健常者も活動・参加できる環境を整備するため、広大な山を背景に頂上(海抜約200m)まで森を整備していくことがそのNPO団体の目標です。そのため、私を含め私の所属する美術団体(とよはしアートユニット)からも人員を援助しております。

現在活動を行なっている山は、戦後の植林事業以来まったく整備がされていないため、木々や蔦が生い茂りほとんど日の差さないジャングルと化しています。そのため未整備の領域に入るにはきわめて困難で、新たな整備作業はかろうじて冬季の安全な時期のみ行なっています。

そうした中で、作業を年間通じて行なっていくには森での生活や休息の場を確保することが重要となってきます。しかし、地上に建てた山小屋では湿気による被害が激しく、また害虫が多く限界を感じていました。

このツリーハウスを作るにあったっては、山の狭い山道や急斜面では、資材の運搬など困難な点が多いため、山頂側より伐採した間伐材を降ろし、それらを構造材として使用しました。

ここの山もそうですが、人が以前生活の糧にしていた山の多くには大木が非常に少なく、従来の欧米タイプのツリーハウスを作るには対象とする樹(ホストツリー)の選択に限りがあります。

またツリーハウスの固定に関しては、日本人でツリーハウスを作る人の多くが悩むところです。欧米のツリーハウスの専門家が勧める様に、幹にボルトを直接打ち込み金具で固定することに対しては、多くの日本人が抵抗を感じるからです。そのため多くは板材によるボルトで間接的に締め付ける方法を採用してきました。しかし、この方法は前者のボルト固定に比べはるかに樹へのダメージが大きく、締め付けによって樹液の流れが途絶えて立ち枯れしてしまう危険性が高いのです。

その点、ダ・ヴィンチ・グリットによる構造は、その荷重を複数の幹に分散させることができるという特徴があります。そのため、部材を幹に固定するには、ボルトで締め付けるほどの接合力を必要としません。麻・棕櫚縄等の自然素材で結束することで構造の安定を図ることができるのです。またこの荷重の分散化と構造の軽量化に伴い、必ずしもホストツリーが太い幹である必要はなく、その選択肢を広げることができるのです。

参照ブログ 究極のツリーハウス

エコデザインへの提言

アイデアの原点には、自然法則より導かれるデザインシステムの研究と応用が必要であると考えています。

なぜなら、自然界の現象と同調する形態やかたちにはしくみがあり、それらを技術転換し応用するならば、デザインがエコロジカルな問題を解決することができると確信するからです。

その点、我々の文明では科学的要素を取り入れたデザイン教育や芸術教育が未発達であり、むしろ人間中心・さらにその感性を重視する教育の段階にとどまる傾向があります。

物質的な豊かさを追求する時代においては、所有する主人は人間であったため、人間工学を取り入れたデザインがプロダクツデザインの頂点となっていました。

しかし今後、デザインの分野では、そこから脱皮し、主人が地球であるためにも様々な学問による地球工学を取り入れたデザインが主流となっていくことを望んでいます。