- 3. ゾーン化

ゾーンの方式

次にゾーンと方式との関係を説明しておこう。そうすることでゾーン多面体をシンプルにとらえることができる。

図218はゾーンの交差を概念図によって示すものである。この図においてゾーン15は、座標軸12を地軸とみなした場合赤道に位置し、体の周りを一周している。

座標軸数nはゾーンを示す数でもあり、二本の座標軸12に二つのゾーン15が対応している。

座標軸が互いに交差する位置は体の体心11の一点であるが、それに対応するゾーンの場合、二本のゾーンが互いに交差する位置は二つの面となり、地軸に対して東西の二箇所の面16となる。いわゆる一つのゾーンは交差する他のゾーンと二つの面を共有することになる。

数式で説明すると、一つのゾーンにはそれ自身を除く(n-1)のゾーンが重なっている。そして、このゾーンは他のゾーンと共有する2面を有することにより2(n-1)の平行四辺形を有することになる。

図218

例えば、四つの座標軸を備える菱形12面体の場合、一つのゾーンに対して3本のゾーンが重なり、一本のゾーンは6つの平行四辺形から成り立つことになる。

よって、1つのゾーンが2(n-1)面を有することで、全ゾーンの有する面数はn×2(n-1)で表すことができる。しかしゾーン多面体の全ての面数となると、構成面の平行四辺形が2つのゾーンを共有しているため、実際はその半分の数となり、n(n-1)となる(文献13参照)。

ゾーン化

ゾーン多面体の形成はこの原理に従っているため、先で挙げた古典的な多面体群や星型多面大群とは形成方法を異にしていることが分かる。

この点を比較して大別すると、

アルキメデス立体はプラトン立体のそれぞれの頂を切り取る方法で形成し、これを切頂化(Trancation)と呼び、

アルキメデス立体の双対立体はアルキメデス立体を双対化(Dualization)することによって形成することができる。

星型多面体は、体の中心に多面体を核模型と設定することで形成し、星型化(Stellation)と呼んでいる。

これに対してゾーン多面体は、座標軸構成を用いることによって形成している。この形成を、ジョージ W.ハート(George W.Hart)ゾーン化(Zonohedirification)と命名している。以下、それに倣いゾーン化という。

ゾーン化における座標軸構成の設定には主に古典的多面体を用いている。

例えば、図219で示す正12面体の備えている5回回転対称軸は6本からなり、全ての座標軸を用いてゾーン化すれば6つのゾーンを形成し、図198で示した菱形30面体を形成することになる。

また、この6本の座標軸の内5本を座標軸構成に設定すれば、図203で示した菱形20面体を形成することになる。以下、ゾーンの数を略して6ゾーン、4ゾーンという。

スティーブ ベイヤー(Steve Baer)は、このゾーン化の適用を広げ1973年の公開特許文献の中で10ゾーン及び31ゾーンを提案している。

その10ゾーンは、正12面体の備えている3回回転対称軸、すなわち正12面体の中心と20個の頂点を結ぶ10本の直線からなる軸構成を設定しゾーン化している。

31ゾーンは、正12面体の3回回転対称軸10本、5回回転対称軸6本、及び2回回転対称軸15本の全てを合わせた31本からなる座標軸を用いたゾーン化である(特許文献3参照)。

今日ジョージ W.ハートは、このゾーン化の対象となる座標軸構成を古典的多面体群に広げ体系化し、ゾーン化の理論を発表している(非特許文献14参照)。

以上、幾何変容に関わる第一の要素の概要を述べてきた。

図219

図198

図203

軸体へ

※補足:ゾーン多面体と準結晶との関係

菱形30面体(ゾーン30面体・ケプラーの30面体とも言う)

前世紀末、準結晶の発見は結晶学のそれまでの概念を変えるものとなった。

更なる未知のテクノロジーが幾何構造と関連して開示されようとしている。