背景‐Ⅱ



1970年代以降、このゾーンシステムの幾何学的研究は展開を見せることになる。
しかしその一方、ゾームというドーム型構造物はジオデシックドームに比べて際立った展開は見らなかった。むしろそのシステムや原理の応用は、建造物より教材模型や組み立て玩具への開発へと展開していった。
例えば、
図13のゾームツール(”Zometool“/Biocrystal,Inc./Boulder,Colorado)などがその典型である(文献5参照)。

また、ゾームにおけるフレーム構造に関しては、その技術的限界と問題が指摘されている。システム上、その構造は菱形格子によって構成するため構造上剛性に劣る点が挙げられている。そのため、菱形格子の対角線上に補強となる支持部材を加えて三角形の格子を形成する方法が取られている。

 その場合、フレーム構造の頂点にあたるコネクタには複数の支持部材の端部が集中しコネクタの形状は複雑となる。それによってコネクタは高価となる上に、構築の際には多大な労力を費やしてしまう。なお、この様な点はフレーム構造のジオデシックドームにおいても同様の問題となっている。


 2000年初頭、Florian Tuczek(フロリアン・ツゼック)は、ゾームのフレーム構造の最終構築物への適用において前述の限界を指摘し、パネル構造によって新たなゾーン多面体構造の構築を可能とする構造システムを発表した(特許文献3および文献6参照)。


その特徴は、システムによって形成するゾーン多面体を直行3座標軸空間に組み込むことができるものでもある。すなわち、そのシステムによって構築する構造を容易に都市空間に組み入れることが可能となることを彼は提案している。図16はその新しいタイプのゾームであるが、様々なゾームが直方向に連結する様子が見て取れる。

さらに彼は、ジオデシックドームのフレーム構造における限界および単体としてのドーム型形態の自由度に建築上の限界を指摘し、パネル構造による球面分割方法に改良を加えたジオデシックドームを発表した(特許文献4参照)。

従来のジオデシックドームは、ごく一般の直方体構造の建造物に連結することが困難であった。しかし彼は、ドーム構造を直行3座軸方向に球面分割する方法を見出すことで、それを直方体構造の建築物に接続することを可能とし、ひいてはそれを都市空間の中に組み込みやすくした(図17参照)。

 以上述べた様に、プラットン立体を基軸として構築するジオデシックドームおよびゾームは、システムやパネル構造に改良を加えることによって、建築への適用の範囲を広げる可能性を有している。
 
 一方、先に述べたフレーム構造におけるコネクタの複雑化という問題点に対して、パネル構造によらない従来とは異なる発想による格子構造が1998年に発表され、同年その構造を構成するモジュールが考案された(特許文献5参照)。
図18‐1の左下はそのモジュールである。三角形の単体であり、連結するための支持材が延びている。その上は、このモジュールを連結することによってでできるパターンで、六角格子の平面図である。立体的には、支持材の調整によって湾曲した面を描くことになる。右の図が、そのトンネル状のドームを示している。

 そこでこのモジュールを従来のフレーム構造、すなわち先に示したドームやそれ以外のトラス構造と比較すしてみよう。
従来は、複数の支持部材のジョイント部分が一つのコネクタを介して接続する一極集中形式といえるだろう。
それに対しこのモジュールは、支持部材の端部が他の支持部材の任意の箇所に接続し、コネクタが常に二つの支持部材同士をつなぐ、相互依存形式といえる。

 このモジュールの考案者であるOlivier Baverel(オリバー・バベレル)は、ジオデシックドームのフレーム構造におけるコネクタの複雑化は、高い技術力を必要とすることで高価な部材となり、そのトラス構造に関しては剛性には優れているが柔軟性で劣るという問題点を指摘している。
すなわち、支持部材が単に引っ張りと圧縮を受ける構造となっていることで、その荷重はコネクタおよびジョイントに極所的に集中し、その箇所は自重や外力に対して弱い箇所となっている。

 そして彼は、前記モジュールを連結することで、コネクタの軽量化と単純化を図るとともに、支持部材の柔軟性を生かした構造を構成することが可能であることを提案している(文献7ならびに文献8参照)。その構造は、“Multi-reciprocal grid”(マルチレシプロカルグリット)構造と呼ばれており、以下それをMRG構造という。

 この構造は、地震等の地盤変動があったとしても全体的な倒壊の恐れがない点で極めて注目すべきものであり、最終的にはドーム型の構造体を形成することができる。
その更なる特徴として、3次元格子構造による空間構成の多様性や工期短縮・組み立ての容易さ・従来の伝統的なフレームの連結に勝る経済性・幅広い構成材料の選択の可能性を挙げることができる。











 背景Ⅲ




ZOME tool Kit

 ゾームツールキットでできる例
図13

典型的なゾーン多面体
図14

メロシステムジョイント
図15

直行に連結するゾーム
図16

直行に連結するジオデシックドーム
図17








マルチレシプロカルグリツトの
モジュールとパターン例1
図18‐1



パターン例2
図18‐




図19






MRG構造のパターン
図20