構造の概要

第三の構造にシステムを組み込む
構成する材が互い違いに組み合うことで成り立つ相互依存形式による構造は、材を単に接合するフレーム構造や積み上げることで成り立つ従来の構造とは区別する意味合いから、第三の構造といいます。

多様な空間構成の可能性に加え、組み立ての容易さや幅広い構成材料の可能性等の点で、緊急時や非常時の空間構造として注目されています。

典型的な特徴は,短期間に中空状の空間を設けることが可能なことです。さらに、その構造が柔軟でしなやかなことから、地震等の振動や衝撃に対して強度があり、従来のフレーム構造に勝る経済的な利点があります。


その原初的発想は、すでに中世ルネサンス時代のダ・ヴィンチ・グリットが端的に示しています。しかもそれ以前より世界の広範囲で使用されてきたといいます。
しかし今日に至るまで、それは建築様式を生み出すほどには高められては来ませんでした。それには幾何学的な進化を伴う必要があったからです。

 第三の構造が注目され研究され始めたのは比較的新しく、ようやく20世紀末になってからです。
今世紀に入り、この構造によってドーム型構築物を形成する研究がなされ、
マルチ・レシプロカル・グリット・システム(The multi-reciprocal grid system)*1として発表されています。それは、主に連結する平面パターンを湾曲させて立体を形成するものです。

また同時期、この構造はプラトン立体に準じて構成することができることから、幾何学的には多軸体*2と命名されました。しかし建築への更なる適用には形態の変容システムを組み込む必要があったのです。 
 球面幾何学と対極に位置するゾーン幾何学、それは単一の形態にとどまるジオデシック理論と異なり、驚くほど多様な形態を派生します。
 このゾーン幾何学の派生形態であるゾーン多面体は、先の多軸体と結びつくことで、両者の特質が融合し、新たな形態と形成システムを有することになります。それがゾーン多軸体というものです(PAT.No4153505)。 

 この種の構造、すなわち多軸体を中心とした相互依存形式による構造は、材を単に接合するフレーム構造や積み上げることで成り立つ、従来の構造とは区別する意味合いにより、第三の構造といいます。
 その中でゾーン多軸体は、中空状の構造物を形成し、さらにその軸形状に変容を施すことで、恒久的な構築物としてのドーム構造への適用が見い出されました(PAT.PEND.No.2008-165538)。
 この先紹介する構造物は、その幾重もの幾何変容による一例であり、その変容過程において私個人の恣意は一切介入されていません。
建築が構造そのものから装飾や有機的な造形を形成することが可能であり、それが様式美となることを示していきたいと思います。


第三のドーム 




参考文献*1
[1] O.Baverel and M.Saidani,
{Retractable multi-reciprocal grid structure}
Journal of the International Association for Shell and Spatial
Structures.Vol.39.n.128,pp.141-146,1998
[2] O.Baverel and M.Saidani,
{The multi-reciprocal grid system} .
Journal of the International Association for Shell and Spatial
Structures.Vol.40.n.129,pp.33-41,1999.
[3] J.P.Rizzuto , M.Saidani and J.C.Chilton
{The self-supportng multi-reciprocal grid (MRG)}
Journal of the International Association for Shell and Spatial
Structures.Vol.41.n.133,pp.125-130,2000

参考文献*2
OKA Reachlaw , KAWAMOTO Masako , NAGATA Shojirou
形の科学会誌 = Bulletin of the Society for Science on Form 22(2), 199-200 ,20071101
OKA Reachlaw , KAWAMOTO Masako
FORMA 22(1), 93-102 ,20070601
OKA Reachlaw , KAWAMOTO Masako
形の科学会誌 = Bulletin of the Society for Science on Form 20(1), 112-113 ,20050601
OKA Reachlaw , KAWAMOTO Masako
形の科学会誌 = Bulletin of the Society for Science on Form 19(2), 258-259 ,20041101