ダヴィンチ・ドーム The Da Vinci Dome

ダヴィンチとフラーのアイデアが融合した新たなジオデシックドーム

ダヴィンチがスケッチ画に遺した謎の絵図、そのアイデアは用途不明のため、数世紀もの間まったく注目されなかった。しかし近年、それはある幾何的パターンを形成し構造的に有用であることが明るみになってきた。

ジオデシックドームは最小の材料で最大の空間を生み出すエコロジーなドームとして知られていが、その構造パターンにダヴィンチのアイデアを取り入れたものがこのダヴィンチ・ドームである。

この新たなドームによって、構造はより柔軟で粘り強くなり、その接合はより軽量・シンプルとなる。組立や解体にかかるエネルギー効率の良さから、移動式ドームハウスとしての可能性を有している。

レオナルド・ダヴィンチが考えたグリットは、ダヴィンチ・グリットと呼ばれ、幾つかの格子構造のパターンから成っています。

近年は幾何学的・力学的な研究が行なわれ、新たなスペースフレームとして注目されています。

それは従来のフレームワークの発想と異なり、構造の幾何学的構成がねばりやしなやかさを生み出しているからです。

それによって柔軟かつ剛性の高い構造物を形成することが可能となります。また生産過程において、効率的なエネルギー消費による高い経済性が認められています。

この重要性にダヴィンチは直感的に気付いており、それをアイデアスケッチとして遺しておきました。

ただし、このダヴィンチ・グリットの構造の発想は極めて自然界の形態形成に同調しており、発想としては決して新しいものではありません。むしろ人類が太古から編み出した柔軟で強固な繊維構造であって、直感的思考で民具や建築の構造としても応用されてきたものです。

しかし、ルネサンス期以降の数百年間、その発想の更なる進展はほとんど見られませんでした。むしろ今日の主流の構造である線材構造、すなわち第二の構造が産業革命・鉄の時代をとおして大いに発展を遂げてきたのです。

そして時が過ぎ、ダヴィンチが考えたことに我々の文明が気付いたのは、ほんの前世紀末の1990年代に至ってからでした。

この15年ほどの間に、最初にそれに触発されたのは彫刻家や数学者達でした。その後、スペースフレームを研究する人々がこのグリットを踏襲するマルチ・レシプロカル・グリット・システムレシプロカルフレームといったシステムやパターンを考案していったのです。

大きさは直径5m~8m大が適しています。

画像の試作:直径5.5m、高さ3.2m

材料は柔軟でしなりのある素材が適しています。

その中でも竹材は最適です。

画像の試作:米松、部材幅4cm、厚み1.5cm、長さ1.2m前後

この時代、人類の集合意識は物質から精神へと移行する過時期に至っています。それに伴ない空間意識も大きくシフトしてきていきます。人類は従来の強固で頑丈な構造からエネルギーを吸収することでこの惑星と同調する構造へと意識が移行してきているのです。

それに先駆けて、前世紀後半には古典幾何学が見直されて新たな進展を見せました。そして1990年代以降、多面体幾何学の方面からは多軸体構造が徐々に見いだされてきました。従来の幾何学では解明できない自然形態の形成などがこの新たな空間構造で明らかになってきたのです。この構造は、多面体構造の基軸となる神聖幾何学の思考が非ユークリッド幾何と融合することで見い出された構造なのです。

しかも、自然科学の観点を加えれば、その原点には物質や生命を形成するエネルギー構造、すなわち原子核構造やDNA構造にあることが見えてきます。それについて私は多面体幾何学(神聖幾何学の根底部)による解明をとおして第三の構造としてまとめました。

この構造の範疇において、何よりもダビンチ・グリットはその代表ともなりえる最もシンプルな表現といえましょう。

そして先の多軸体構造の解明に伴ないこのグリットによって球体を形作ることもでき、ドームの形状を見い出すことが可能となりました。

半球型のドームは、主にフラードームとして知られており別名ジオデシックドームとも呼ばれています。その技術的思想は「より少ない材料で、より多くの空間を包み込む」ことを可能にするエネルギー論であり環境論でもあります。

幾何学的には球面分割の細分化が組み込まれており、その細分化が総三角形のグリットから成ることで、構造的な剛性を高めることを可能としているのです。

この分割方法に沿ってダヴィンチ・グリットを配置することで従来にない新たなジオデシックドームを形作ることが可能となったのです。

歴史的な観点からすれば、ダヴィンチ・ドームは、このジオデシック理論とダヴィンチのアイデアの融合ともいえます。

そして技術的には、従来のジオデシックドームを上回る、柔軟でしなやかな構造を形成します。

そこでは、従来よりシンプルなフレーム接合によって軽量でエネルギーコストの軽減されたコネクタやジョイントの開発が可能となるでしょう。

今後はモバイルハウス(移動式の家)として開発を進めて行く予定です。

画像の試作:総重量約60キロ

軽量の場合は、ドーム上部から組み立てることも可能。

ドーム構造の作り方

データと模型制作に関しては、私の過去ブログに記載しておきました。ブログ第三の建築様式を求めての9月初旬を参考にしてみてください。

ある程度、多面体や幾何学についての基礎知識のあり、DIY程度の経験をお持ちの方でしたら、その内容から実際のドーム構造を作ることができることでしょう。

なお、現在、(2011年10月26日)より詳しい作り方や、詳細な設計値をプログラム化したファイルが出来上がりました。

詳細は、ダビンチグリットの作り方をご覧ください。