- 1. ゾーン多面体 Zonohedron

【ここからのあらすじ】

・・・第三の構造の幾何学的特徴は今まで断片的にしか現れていなかった※。だが、それにつながる個々の内容には共通点が潜んでいた。

本質を掘り下げることによって、あるメカニズムが見えてくる。それによっての新たな構造が浮び上がり、後に有用な技術が開発され、さらに芸術へと展開していく。

新たなシステムを見い出すための要は、ゾーン多面体多軸体構造の二つ要素における接点を見つけ、それらを融合することによって新たな構造の範疇を見出すことにある。そこで、これからその二つ要素について説明することにしよう。

なお、私の考えでは、このシステムの開発は私個人の恣意的な幾何学研究の成果ではなく、むしろ普遍的な幾何学システムの発見だといえる。

さらに構造的に次元の観点からいうと、3次元以上の構造を有することから、多次元構造といってもよい。

(なお、レシプロカルフレームReciprocal frameについては歴史的文献があります。)

【outline】・・・A geometrical features of the third-structure that have been appeared only in fragments up to now * .

However, the common feature lurked in the individual content that connected with it.

By delving into the essence, we'll see some mechanism. As a result, a new structure floats, whereby useful technologies will be developed later, and in addition, it will expand further into the art.

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ゾーン多面体とは

以下、第一の要素であるゾーン多面体について本システムに関連する箇所に即して説明する。

この多面体は、1960年代幾何学者H.S.M.コクセター(H.S.M.Coxeter)がその構造理論を発表する以前には断片的に発見されていたにすぎなかった。

しかしそれ以降、この理論は建築家スティーブベイヤー(Steve Baer)によって開発され、構造システムとして発表されることになる。ベイヤーは、この構造システムをゾーンシステムと名付けるとともに、このシステムを用いて構築するドーム状の構造物をゾーム(Zome)とも名付けた。

その後ゾーン多面体の形成方法は拡大し、今日に至っては、幾何学者であり彫刻家のジョージ・ W・ハート(George W.Hart)がこの形成方法を体系化している。

ゾーン多面体の範疇に属する代表例は背景技術の項で示したが、それ以外に、参考として一般的に知られているものをここで紹介する。

図203は菱形20面体(Rhombic Icosahedron)、図204は斜方切頂立方8面体(Rhombitruncated Cuboctahedron)そして図205は斜方切頂20・12面体(Rhombitruncated Icosidodecaedron)である。

ゾーン多面体は様々な方法により定義付けされているが、この多面体を名付けた幾何学者コクセターは以下のように定義を行なっている。

「ゾーン多面体とは、平行2m角形(平行多角形:二つずつの辺が平行な多角形)の面から成る凸型多面体であり、その面の数はn(n-1)である。ここでnは、多面体において互いに平行となる稜線の異なる方向の数である。」(非特許文献11参照)。

また、ゾーン多面体の特質としては、ゾーン(Zones)と呼ぶ平行四辺形の面の連結した帯を有している。この帯は、多面体の赤道上を一周していることからゾーン(Zones)と呼ばれている(非特許文献12及び13参照)。

具体的にゾーン多面体の形成原理を説明することで、先の定義とゾーンの概念がより明瞭となるであろう。

ゾーン多面体の形成原理

ゾーン多面体の形成原理の基軸となるところは座標軸の構成である。その構成を基にゾーン多軸体を導く。ここでの座標軸とは、原点を始点とする半直線ではなく、原点を通過する全直線を指していう。

例えば図206で示す座標軸構成である。この図は原点11aを通過する4本の軸12aによる構成を示している。設定する座標軸構成は任意設定によっても可能であるが、一般的なゾーン多面体はプラトン立体及びそれより派生する多面体から導く座標軸構成に基づいて形成している。

座標軸構成の設定にこれらの多面体を用いる主な理由は、プラトン立体の備えている回転対称性の特質を応用できる他、幾何解析と分類化の容易性にある。

先の図で示した座標軸構成は正6面体の備えている3回回転対称軸を用いている。図207は正6面体8を貫通する該座標軸構成を示すものである。

【回転対称軸】

ここで回転対称軸について説明しておこう。

対象物(この場合多面体)を貫通する座標軸の延長方向から見て、その対象の形状が回転することによって元の形状と重なり一致する場合、この軸を回転対称軸という。

そして360度の回転の内、何分割の回転で元の形状と重なるかによってその分割数を示す。

正六面体の場合、各頂点と体心11aを結ぶ軸の延長方向から見る体の形状は、図208で示すように菱形を三つ合わせた正6角形となる。よって、この形状は軸12a3を中心に360度を3分割した角度で回転することによって元の形状と重なり一致するので、この軸を正6面体の備えている3回回転対称軸という。

以下、図207で示した座標軸構成に基づいて形成するゾーン多面体の一例を示し、その形成原理を説明する。

ゾーン多面体を構成している平行四辺形において、その内角の角度は設定した座標軸が原点で互いに成す角度を用いる。当該例の場合、4本の座標軸が交差して成す角度は二種類で、70.5度及び109.5度となり、この角度を内角とする平行四辺形は一種類である。設定する座標軸構成によっては交差する角度の数が増え、形成する平行四辺形も数種類の場合もある。

次に、この平行四辺形によってゾーン多面体を形成するが、ゾーン多面体の面数は設定した座標軸の本数によって定まる。

その面数は方式n(n-1)で示すことができ、nは座標軸の本数を示している。当該例の場合、4座標軸なので12面構成の多面体となる。また、軸構成の設定をこの4座標軸構成の内3座標軸に設定すれば6面構成のゾーン多面体となる。

それらのゾーン多面体を図によって示すと、図209が面数12枚による菱形12面体9であり、面数6枚による構成はゾーン6面体となる。

ただしゾーン6面体は、次の図で示す様に二つの多面体となる。一つは図210で示す鋭角ばかりが集まる頂点を持つゾーン6面体13であり。もう一つは図211で示す鈍角ばかりが集まる頂点を持つゾーン6面体14である。よって同じ試みを任意のn本の座標軸に基づいて行なえば、ゾーン20・30・42・・・n(n-1)面体を得ることになる。

steve baer, designer. house of steve baer, corrales, new mexico, 1971 / photograph © jon naar, 1975/ 2007

図203

図204

図205

図206

図207

図208

図209

図210

図211