- 4. トラス構造(単体)
このシステムによるドーム型構造体は、その骨組みを短軸や複軸といった軸材によって構築する他に、以下に示す実施例のごとく立体トラスによっても構築することができる。その構造は、軸材による骨組み構造よりも剛性が高いため、目的とする最終構築物の規模が比較的大きく恒久性を必要とする場合に適している。
以下、図面を参照にその具体例を説明する。核としては図17で示したゾーン90面体A2を用いることにする。この多面体から形成するゾーン延長面による構成は図19によって示されており、その構成を基に立体状構成要素を定めていく。
そして図22においては、その立体状構成要素の貫通空間(H20a,H20b)を示しており、この空間が立体状構成要素の断面となる。
次に、この断面位置設定による立体状構成要素の配置を図示する。図64は、その配置を端的に図示するため、座標軸B20に対応するゾーンに配置する立体状構成要素を示している。この配置を全ての座標軸に対応するゾーンにおいても同様に行ない、かつゾーンの一つの面には一つのゾーン延長面ひいては一つの立体状構成要素が対応する設定によって、核の外殻を立体状構成要素が規則的に覆うことになる。
そして全ての立体状構成要素を抽出することで、次の図65で示すゾーン多軸体E11aを形成することになる。
第三の工程ではこの立体状構成要素を構造用要素へと転換することによって中空状構造体を形成する。
その工程の第一段階としては、各立体状構成要素が互いに交差して重なる箇所を保持し、その外方延長部を切断することで第二のゾーン多軸体を形成する。
その切断設定を、座標軸B20に対応するゾーンに配置する立体状構成要素を示す平面図を用いて示す。
図66はその平面図であり、座標軸B20に対して平行に位置する立体状構成要素(D110a,D110b)はその断面を見せており、その両側に控える他の立体状構成要素(D111~D119)を用いて切断設定を示す。
先ず、前記立体状構成要素(D110a,D110b)の断面形状である三角形の外方二辺の延長線27を切断線とし、次にその両側に控える立体状構成要素(D111~D119)をこの切断線に沿って、その切断面がその内方に重なる立体状構成要素の側面と平行になる様に切断して取り除く。
次の段階で、この切断設定を他の立体状構成要素に対しても同様に行なうことで、次の図67で示す第二のゾーン多軸体E11bを形成することになる。
各立体状構成要素の切断面は、その内方に交差して重なる他の立体状構成要素の側面と面を一つに成している。それによって、後にこの面を中空状構造体においてパネル形状の構造用要素へと転換し、パネル構成の集約化を成す。
そしてこの工程の第二段階として、前記立体状構成要素の立体トラスへの転換を示すため、図67で示した第二のゾーン多軸体の立体状構成要素を単体で取り出し、その転換を説明する。
その単体を図68で示すと、当該ゾーン多軸体は二種類の立体状構成要素(D11a,D11b)から成り立っており、その長手両端の側面は切断面28である。図中、下段は、その両立体状構成要素の形状を有する立体トラスからなる構造用要素(J11a,J11b)を示している。この構造用要素は、前記立体状構成要素の陵を金属フレームとし、他の構造用要素と接続することを可能とする金属フレームを備えることで、図が示す様に立体トラスを形成することになる。各構造用要素の接続は、金属フレームに穿った孔を通してボルト締めすることで可能となる。
この構造用要素からなる中空状構造体を次の図69で示す。中空状構造体K11の下方に図示する構造用要素(J11a,J11b)は、該中空状構造体におけるその位置関係を示している。
第四工程においては、このようにして形成する中空状構造体の主要な構造用要素を抽出して目的とするドーム型構造体を形成する。そのドーム型構造体は、前記中空状構造体の天蓋部にあたる構造用要素を抽出し、そして該中空状構造体を鉛直に通る座標軸B20に対して平行に位置する構造用要素を設置面方向に延長して支柱とすることによって形成する
図70で示すドーム型構造体L11aはその外観を示している。この構造体は目的とする最終構築物の骨組みとなる。
一方、この骨組みを覆うパネル形状の構造用要素は、この骨組みを組み立てた後に取り付けることが施工上好ましい。
そこでこのパネル形状の構造用要素の形成を、もう一度図67に戻ってゾーン多軸体E11bを参照に説明する。
ゾーン90面体(菱形90面体)とその平面図
図17 図22
ゾーン90面体の一ゾーンに配置した立体状構成要素
図64
ゾーン90面体に準じる立体状構成要素
図65
図64の平面図
図66
パネル状構造用要素への転化
図67
構造用要素のトラス構造パーツ
図68
パネル状構造用要素のトラス構造
図69
パネル状構造用要素
図67
先にも説明した様に、このゾーン多軸体E11bの各立体状構成要素の切断面は、その内方に重なる他の立体状構成要素の側面と面を一つに成すことができる。この面を一つのパネルと見なせば、当該立体トラスの骨組み構造を覆うパネル材を集約化することができ、図71で示す集合パネルによる構造用要素を形成することになる。
これらの構造用要素は、五枚一組からなる構造用要素J11cおよび三枚一組からなる構造用要素J11d、六枚一組からなる構造用要素J11eの三種類となる。あるいはその最終構築物の規模に合わせて、それら集合パネルを細分化して組み立ててもよい。
トラス構造による自立型ドーム
図70
これらの集合パネルを先に示した第一のドーム型構造体である骨組み構造に取り付けることで、次の図72で示す第二のドーム型構造体L11bを形成することになる。なお、支柱用の立体トラスには、個別のパネル材を取り付ければよい。更に、最終構築物を構築する際は、その目的に合わせて構造体の支柱間の開口部に補助的に骨組みを施し、支柱の骨組み同様に個別のパネルを取り付ければよい。次の図73においてその一例を示す。
当該ドーム型構造体の凹凸面を有する形態は、先の実施例においても示したごとく、パネル材によって構築するドーム型構造体には共通の特徴となっている。そしてその形態は、強風や台風による風圧を抑えることができるという機能を有している。
流体力学の観点から、その点をゴルフボールに設けたディンプルに譬えて説明することができる。ボールの表面にディンプルを設けると気流の流れの中に強制的に乱れを誘発し、乱流拡散を促進し、流れに対して抵抗は小さくなるといわれている。
それと同様、強風時においてこの凹凸面の周りの風の流れは乱流状態となり、この形態が気流の抵抗を抑えることになる。
パネルのモジュール
図71
トラス構造(拡張型)
ゾーン90多軸体に準じる自立型ドームの一例
図73
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