自立型パネル構造Ⅱ

次にゾーン20面体を核として形成するドーム型構造体を示す。このゾーン多面体を核とするゾーン多軸体は、20本の立体状構成要素から成り立っている。そのため、その中空状構造体における構造用要素を軸状の材とすれば、それに対して内部空間は比較的狭くなり、建築物への適用は困難となってしまう。むしろその構造用要素はパネル材あるいは後に示す立体トラスによって形成することが好ましい。この例では先の例同様にパネル材によって形成する場合を示す。

図51で示すゾーン20面体A9はその核である。第二工程においては、この多面体の外殻に立体状構成要素を配置するため、その手段としてゾーン延長面による構成を行ない、それによって立体状構成要素が配置する空間および断面位置の設定を行なう。

その設定を明確に示すため、先ず一つのゾーンを抽出して説明する。図52は、当該ゾーン多面体の一つのゾーンC90に配置する立体状構成要素を該ゾーンに対応する座標軸方向より見る平面図である。

この図において設定のための基準線を求めるには、該ゾーン上の一つ置きの面をその面に対応する座標軸B90の方向に延長することでゾーン延長面F90を形成する。さらにその両端に位置するゾーン面もそれに対応する座標軸の方向に延長することでゾーン延長面を形成する。そして、それらのゾーン延長面によって示す線によって囲まれる空間が立体状構成要素の貫通空間(H90a,H90b)となる。

ゾーン20面体

図51

ゾーン20面体に準じる一つのゾーン

図52

構造用要素をパネル材とするには、この貫通空間(H90a,H90b)の外方辺をパネル材の断面外方辺とすればよい。当該立体状構成要素(D90a,D90b)は、そのパネル化を想定した形状となっている。また、これらの構成要素を図53の斜視図で示すことで、その配置構成が立体的に把握されるであろう。

そして以上の設定を全てのゾーンに対して同様に行なう。またその際、前記ゾーン延長面による構成を形成する前にはあらかじめ、ゾーンの一つの面は一つのゾーン延長面に対応する設定を行っておく。それによってゾーン上の各立体状構成要素が互い違いに交差して重なる様になる。

ゾーン上の立体状構成要素

図53

そして全ての立体状構成要素を抽出することで、図54で示すゾーン多軸体E9を形成することになる。

第三工程である中空状構造体の形成においては、前記立体状構成要素が互いに交差して重なる箇所を保持した上で、その外方延長部を切断して取り除き、その内方側の立体状構成要素を構造用要素に転換し、それらが互いに連結して構造体が形成する様に、それに接続手段を設けることによって中空状構造体を形成する。

図55で示す当該中空状構造体K9は、先に示した例同様のパネル材による構造用要素からなるものである。この図が示す様に、各構造用要素の切断は、その内方に交差して接続する他の構造用要素の該側面に対してこの切断面が水平となる様に設定してもよい。

その場合、図56のドーム型構造体L9で示す様に、この切断開口部を新たにパネル材等によって覆えば、構造用要素の側面部と切断開口部の面とを共有する一つの面を形成することができる。そして、この開口部側のパネルは側面パネルを形成する際にそれと同一のパネルにすることができ、それによって構築用部材をより少なくすることができる。

このドーム型構造体L9を形成するには、鉛直に位置する座標軸B90に対応する構造用要素(J90a,J90b)を該座標軸に対して平行に延長して支柱材を形成する。そして中空状構造体の下方を構成する構造用要素を取り除き、天蓋部分に当たる構造用要素を用いる。

図57は、このドーム型構造体によって構築する最終構築物を示している。この構造の側面開口部は、当該中空状構造体の面に沿って外壁面を施せば調和した形態を形成することができる。なお、窓や出入り口等はこの開口側に施すことが好ましい。

パネルによるゾーン20面体に準じる多軸体

図54

ゾーン20多軸体

図55

ゾーン20多軸体の自立型

図56

複軸による骨組へ

ゾーン20多軸体に準じる中空状の建物

図57